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はっぴーはろうぃーん(*´ω`*)2012

1.Trick or Treat(お菓子くれなきゃ悪戯するぞ)
「はい」
「だから、なんだよその手は」
「コスプレがないんだったら、例の常套句があるだろ」
 まるで催促をするように、ソファに座る膝の上にひじを預けて、雲雀は笑った。さも「さっさと言え」とでも言うように。
「……コスプレじゃなくて、仮装な」
「その仮装を梅子さんが俺のためにしてくれないから、俺がこうしてお願いしてるんじゃないか」
 それは「お願い」をしている態度ではなくて「強要」というんじゃないのか?――とは言えず、梅子は観念してソファ前に両膝をついた。
「あれ、言ったら帰らせてくれるんだな?」
「ええ」
 にっこり微笑む雲雀に嫌な予感を感じつつも、梅子はこの時期お決まりのセリフを口にする。
「Trick or Treat……?」
 下から見上げるような体勢でハロウィンの常套句を言ったのだが、発音には自信がないので、思わず首を傾げてしまった。これであっているのか実に不安だ。そんな梅子の不安をよそに、雲雀は満足げに微笑むと梅子の両頬を挟むように手で包む。
「上出来」
 そっと触れる唇が甘いのはいつものことだけれど、なんだか今日はとても優しい気がした。
「……で? お菓子は?」
「これから食べるよ」
 ちゅ。啄ばまれた唇に、ベッドへのお誘いを感じる。梅子は雲雀を押しのけてその場に立ち上がった。
「こらぁっ! 私はお菓子じゃないし、約束と違う!」
「俺にとってのお菓子は梅子さんだし、今日中に帰らせるとは約束してない」
 きらりと煌く雲雀の瞳に、もう逃げられないことを知った梅子は、引き寄せられる腕の中で仮装させたひめのことを思い浮かべた。きっと、彼女も似たような男に捕まっているところなんだろう、と……。


2.Trick but Treat(お菓子くれても悪戯するぞ)
 今日はハロウィン。
 梅子と相談し、趣向を変えて小悪魔コスチュームに身を包んで出迎えるつもりだった。が、夕飯のもりつけに時間がかかってしまい、気づいたときにはリビングのドアを鷹之が開けていたところで――。
「Trick or Treat」
 たった今から言おうと思っていたセリフを取られた。言おうと思っていたことを先に言われて、口をぱくぱくさせているひめに鷹之は妖しい微笑みを浮かべた。
「ほら、かわいい小悪魔さん。僕にお菓子をくれないんですか?」
「あの、それは仮装をしている私のセリフであって、鷹之さんが言うことではないですし、むしろ私が鷹之さんからお菓子がほしいです!」
 そして、あわよくば素直にくれないだろう鷹之に悪戯をしてやろうと思っていたのに、台無しだ。
「でも、先に言ったのは僕なんだから、僕にくれませんか?」
「……鷹之さん、ずるい」
「なんとでもおっしゃってください」
「仮装だってしてないくせに」
「ばかですね。……どうせなら、今からひめさんの首筋に噛み付いて、血を吸ったっていいんですよ?」
「……え?」
「血は吸いませんけど、キスマークならつけてあげる」
 ぎゅぅっと鷹之に抱きしめられて、むき出しの首に噛み付かれる。甘噛みであむあむされていると思ったら、舌で肌をくすぐりそっと吸い付いてきた。いつものようにされただけなのに、なぜか肌がざわつく。
「たか、ゆき、さ……っ」
「気持ちいい声、出てるよ? ひめ」
 肩がびくりと震え、思わず鷹之の体にしがみついた。
「ま、お菓子をもらったとしても、悪戯はするけどね。――ベッドの上で」
 耳元で囁かれた声で体の力が抜けたひめの首筋には、いつもより赤いしるしが残っていた。


3.Trick and Treat(お菓子くれたら悪戯するぞ)
「シリウスさん!」
「なんだ」
「お菓子をくれないと、悪戯しちゃうぞ!」
 不思議な顔をしたシリウスに、叶流はにっこり微笑んだ。
「私のいた世界では、こう言ってお菓子をもらう習慣があったんです」
「……それは不思議な習慣だな。というか、なぜお菓子なんだ?」
「さぁ? 詳しいことはわかりませんけど、その日はお菓子をもらってもいい日なんです」
「なるほど。で、今カナルはお菓子がほしいのか?」
「はいっ。というか、シリウスさんに悪戯をしたいだけかもしれません」
「……だったら“悪戯させろ”といえばいいだろう。なぜ、お菓子になった」
「……なんとなく、です」
「ふぅん」
「で、悪戯させてくれるんですか!?」
「……構わないが、おまえにはできないよ」
 口元を緩ませたシリウスに、今度は叶流が首をかしげる番だった。
「どうしてですか?」
「カナルは理由もなく人に悪戯をすることができないからだ」
 そっと頭を撫でられる。
「むしろ、俺がカナルに悪戯をしてみたい」
「……え!?」
 ははっ、と笑うシリウスが髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き回して、叶流の耳元に唇を寄せた。
「かわいい反応しかしないのがわかってるから、悪戯しないけどな」
 低い声にからかわれているだろうことはわかっていても、頬に熱がこもる。
「でも、ほかのヤツには悪戯されるなよ? 特にライジェルとか」
 それが独占欲だということも言った本人は気づいてないし、言われた本人はそれどころじゃないほど顔が赤くなっているので、傍で見ていたテアとフィデスは揃って遠くを見つめた。


4.Trick so Treat(お菓子くれたので悪戯するぞ)
「今日は、ハロウィンです」
「人間は、本当にイベントが好きだな」
「あなたも元は人間んじゃないですか?」
「おまえは人間よりも感覚が人間離れしていることを少しは気にしたほうがいいぞ」
 悪魔に言われたくないと思いながらも、にいなは冷蔵庫からあるものを取り出した。
「それで、にいなは何かしないのか?」
「そう言うと思ったので、お菓子を作ってみました」
 リビングでテレビを見ていたミオに、にいなはかぼちゃプリンを差し出す。黄色い光沢に電灯の光が反射して、表面がつやつやでおいしそうだ。その表情が顔に出ているミオが、目を輝かせてにいなを見上げた。
「にいなはお菓子を作れるのか!」
「料理はミオさんができますから」
「じゃあ、お菓子の担当はにいなだな、ってそうじゃない!! そうじゃなくてだな!!」
 こんなことをしてないで歌の自主練でもしていろ、と言われるのかと思ったにいなは肩を落とす。が。
「俺がトリックオアトリートと言う前にお菓子を出すのはルール違反だ!」
 大概、この悪魔も悪魔らしくないのだが、にいなはあえて言わない。いつもスーツで正論(に近しいこと)を言ってくるので、それを「はいはい」と聞き流す。――にいなにとって、ミオは愛しい悪魔なのだ。
「で、食べるの? 食べないの?」
「食べる!!」
 差し出したスプーンを手にしたミオが、おいしそうにかぼちゃプリンをたいらげる様子を、にいなは隣に座って眺める。
 想像していた悪魔とは全然違う悪魔を間違って召喚してしまったのは事故だけれど、こうして一緒にいられるのは奇跡に近いのではないか、と。
「ごちそうさまでした」
 しっかり両手を合わせてミオに、笑顔になるにいな。ソファから立ち上がって、ミオが空にした陶器を流しに持っていこうとしたら、手首をとられ、
「え」
 あっという間にミオと天井が見えた。
 しばらくして、ソファに押し倒されていることを理解する。
「……ミオさん?」
「お菓子をくれたからな、悪戯しないといけない」
「そういうルールでしたっけ?」
「そっちのほうが、悪魔らしいだろ?」
 そう言って、にやりと笑ったミオの口元にはかわいい八重歯が見えていた。その相手を誘うような表情は、実に悪魔らしいとさえ思ったにいなであった。


5.Trick yet Treat(お菓子いいから悪戯させろ)
「あ、ユーヤく」
「ああ、うん、俺、そういうイベント好きじゃないから」
「え、あのだから、」
「だからもなにもなくて、お菓子いらないから悪戯させろ」
 帰って来たユーヤにハロウィンのコスプレを見てほしくて玄関前で待機していたリエは呆気にとられる。
「いや、違うな」
「え、違うの!? じゃあ、私が悪戯してもいい!?」
「それも違う」
「じゃ」
「ちょっと黙れ」
 しゃべろうとするリエの唇に自分のそれを重ねたユーヤは強制的にリエを黙らせる。そして、綺麗な笑顔でこう言った。

「俺に、悪戯されろ」

 顎を指先でくいっと持ち上げられたリエは、眼前に迫ってきた彼の唇を受け入れる。
 媚薬でも仕込まれているのかと疑うほどに、キスだけで腰が抜けそうになった。のちにそれを姉に報告という名の相談をすると、「これ以上調教されたら私に言うのよ」と注意を受けたリエであった。


END

みなさま、ステキなハロウィンをお過ごしくださいヾ(*´∀`*)ノ